導入事例 南伊勢町立南島東小学校

南伊勢町立南島東小学校(中村武弘校長・三重県)は、総務省「平成26年度クラウド等の最先端情報通信技術を活用した学習・教育システムに関する実証」の検証協力校(アイディア校)だ。同事業で構築する学習・教育クラウド・プラットフォーム(以下、教育クラウド)とタブレット端末を同校ではどのように活用しているのか。中村武弘校長に聞いた。(取材:教育家庭新聞社 2015年 5月)

一年生から始める"情報の分類”

1年生の教室では、7名が1人1台のタブレット端末で「迷路」や、ベン図や表(マトリックス)を使った「仲間分け」、「情報モラル」の問題などに取り組んでいる。画面に「せいかい」と出ると「やった!」とうれしそうだ。「新しい問題になった」と隣の児童に見せるシーンも
 南島東小学校は全校児童64名の小規模校で、1級のへき地校。同校にタブレット端末(iPad mini)が届いたのは本年4月末で総務省・教育クラウドは5月から活用を始めた。教育クラウドで現在活用できる教材ソフトのうち、同校では1・2年生用に2種類、3年生以上は3種類を選択。冒頭で活用しているのはその一つ「ポケタッチ」だ。
 「迷路」は、タブレット端末やPC操作をトレーニングできるもの。「ベン図」「表」は、700を超えるポケモンのタイプや進化形を分類することで、段階的に情報を分類する力をつけるためのトレーニング教材だ。例えば「はがね」「くさ」双方のタイプを持つポケモンは、ベン図の重なった箇所に置く。タイプが分からないときにはポケモンをクリックして調べることができる。

 トレーニングが1段階終了すると、バッジを獲得できる。その後、トレーナーの質問に答えて次の段階に進む。トレーナーの質問は学年に紐付けされた「情報モラル」教材で、解説もある。
 「ベン図」の次の段階が「表」による分類だ。分類の要素が「タイプ」「進化形」と複数になり、タテ軸とヨコ軸の関係を理解しなければ分類できないので難易度が上がる。

 授業の途中で教室に現れたのは、1人の3年生。黒板の前で、いくつものポケモンを素早く分類していった。3年生児童の端末画面は書画カメラからスクリーンに提示されているので、進め方がわからない児童がそれを見て気づくきっかけとしたり、次に進むべき内容を見て予測を立てたりすることに役立っていた。

児童の「教え合い」活性化する仕組みに

中村校長は「かつては『外遊び』の中に『仲間わけ』を学ぶ仕掛けがあった。今はそのような外遊びが格段に減ったが『ポケタッチ』ではその『仲間分け』を遊びながら学ぶことができる」と話す。
さらに「教え合い」が生じやすい仕組みづくりも工夫している。「『教え合い』を促すポイントの一つは『教えすぎない』こと。数人に教えれば全体に広がる」。
 同校で最初に「ポケタッチ」に取り組んだのは、1年生全員(7名)と通常の授業では課題に取り組みにくい児童だ。通常の授業では集中できる時間が短いが「ポケタッチ」では集中力が持続するという。この日の授業の途中に教室に「先生」として1年生の質問に答えていたのがその児童だ。
 教員の指導は最低限とし、下級生が先に学んで上級生に教える、クラスの数人のみに教えて全体に広げる、通常の授業では集中力が続きにくい児童が皆に教える、といった様々な「教え合う」経験は、自己有用感の獲得や自ら取り組む意欲づくりにもつながる。

丁寧な文字を書く必然性も

 中村校長は「ポケタッチ」について、「よく考えられたツールで、使い易い」と話す。現在同校では休み時間と給食時間が早く終わった時間に限定して「ポケタッチ」を活用している。途中で止める際には各児童の履歴を残すために「ひみつのあんごう」として平仮名や記号15文字程度をシートに書き写す必要がある。暗号を読み取ることができないと、最初から始めなければならない。1年生で丁寧に文字を書くことは簡単ではないが、「ポケタッチ」スタート後1週間弱で格段に「文字を丁寧に書く」児童が増えたという。

低学年・高学年で接続APを限定

同校のタブレット端末は現在全15台。「iPad mini」を選択したのは、落としにくく壊れにくい大きさであると判断したためだ。
 無線LANアクセスポイント(AP)は2台で、3階と1・2階に各1台設置。さらに8台の端末を1・2階用APに、7台の端末を3階の4~6年生用APに設定し、学年で使用するコンテンツを限定して活用。これにより「7台あれば1年生全員が活用でき、一斉に接続してもほぼ問題なく稼動する」という。

教育クラウドで広がる可能性

総務省の教育クラウドについては「小規模校ではICT支援員の配置が難しい。そこで必要になるのが、どんな教員でも対応できる仕組み。1台1台にインストールしてバージョンアップなしで5年間使用するという時代ではない。クラウドを活用すれば、ブックマーク感覚で使用教材を保存できる。また、児童はクラウドにアクセスして教材ブックマークをクリックするだけで使うことができる。バージョンアップも容易。今後、家庭からクラウドにアクセスする場合があっても『ひみつのあんごう』さえあれば『ポケタッチ』の続きにどこからでも取り組むことができる」という。
 今後同校では、2年生では校外の観察学習で、タブレット端末のカメラ機能を活用する。「ポケタッチ」の「タッチタイピング」は、3年生のローマ字学習において取り組む予定だ。
 さらに一部の児童については家庭への持ち帰りも視野に入れている。
 「平仮名やカタカナを書くことを苦手にしていた児童が、『ポケタッチ』で文字を丁寧に書き写すようになり、ローマ字入力の学習も始めた。保護者とも話し合い、タブレット端末の持ち帰りを行うことで、繰り返しの学習を展開しやすいようにしていきたい」と話す。

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