導入事例 宜野湾市立普天間第二小学校

宜野湾市立普天間第二小学校(川村和久校長・沖縄県)の豊川多美江教諭は、沖縄県マルチメディア教育研究会でタブレット端末の活用を検証している。「教員が一斉提示や説明などに活用するだけではなく、低学年児童でもそれぞれの児童がタブレット端末を活用できるような方法や教材はないか」と考えていたときに研究会で出会ったのが、タブレット・パソコン入門教材アプリ「ポケタッチ」だ。「児童に馴染み深いキャラクターが学びを楽しくサポートしてくれそう。低学年がどこまでタブレット端末を活用できるのか検証したい」と考え、宜野湾市情報教育研究員としての研究授業に向け、低学年でのタブレット端末活用について検証。「予想以上に児童のスキルが短期間でアップした」と語る。(取材:教育家庭新聞社 2015年1月)

日常的な活用で学びが深まる

黒板には、22種類のポケモンのカードがランダムに貼られている。本時ではこのカードを、「分類」しながら「分かりやすく」数える方法をグループで考えた。
 分類方法は、ポケモンのタイプだ。授業前半5分間は、各自「ポケタッチ」でポケモンのタイプを調べ、分類する。
 「ポケタッチ」の思考ツールの日常的な活用で表やベン図などの分類に慣れている児童は、各グループに配布されたミニホワイトボードにポケモンのカード(本研究授業用に特別に準備)を「みず」「でんき」「ほのお」「いわ」「くさ」など5種類に分類しながら分かりやすく並べていく。各班のホワイトボードは一斉に前に掲示して、分け方を発表した。
 「4班では、5種類に分けました。でんきタイプは6体、くさタイプは5体、ほのおタイプは4体、みずタイプは3体、いわタイプは5体であわせて23体でした」。 その後「分け方が似ているもの」「見やすい分け方」について考え「順番に並んでいる方がわかりやすい」ことに気づかせていく。 「棒グラフ」への学習につながる学習内容だ。

豊川教諭は「ほんのひと月ほどで、PCスキルはもちろん、算数・数学的なものの見方考え方が遊びながら自然に身についていました」と話す。当初の不安は「1年生でどこまでタブレット端末を使えるのか、使う際のルールが守れるのか」という点だ。 最初の一週間は、つける、消す、持ち運ぶといった操作や取り扱いなどからスタート。 問題が起こるたびにひとつひとつ皆で話し合いながら、クラスのルール「ほかの人のタブレットにはさわらない」「じかんをきめる」「リーダーがあつめる・くばる」などを決めていき、ルールは教室にも掲示した。 タブレット端末には各自の氏名を記入することで、自分の端末だけではなく、他の児童のものも大切に扱うようになった。ルールに慣れるにつれ、休み時間での自由な活用も徐々にスタート。
 「ポケタッチ」には、タブレット操作やアルファベット、タイピング、ローマ字学習、情報分類・比較など各種トレーニングがあり、段階が進むにつれ成績に応じたポケモンバッジが獲得できる。自由な活用の中でローマ字入力やタッチタイピングに挑戦する児童も出てきたという。
 ひらがな練習や時計の文字盤の読み方などのアプリもダウンロード。遊びながら、時には競い合いながらリテラシーを高める様子が見られた。授業参観では、児童が自由にタブレット端末を扱う様子も披露し、保護者から好評を得た。
 豊川教諭は「低学年は、PC室よりも普通教室での活動のほうが指導しやすいと感じました。 一斉指導の指示が通りやすく、授業の一部分や休み時間にも活用できます。ローマ字を教えてから、と考えていたアルファベットも『ポケタッチ』で楽しく覚えていくなど、思いもよらないことがどんどんできるようになっていきました。タブレット端末が遊び道具になる前に、その学習ツールとしての可能性を体感させることの意義を感じました」
 一か月経る頃には、教え合いや言葉で伝え合うことが上手になり、日ごろのグループ活動でも「誰がリーダーになる?」と児童から声が上がるようになったという。
子どもは良くも悪くも大人の予想を超えるもの。 吸収力のあるときに広くインプットをしていくことの重要性を感じたと語る。

一年生の取組に感じる可能性

学習は実生活と結びつかないと身につかないものです。 低学年からのタブレット端末活用は仮想体験が中心になるという印象を持っていましたが研究授業では、児童が「良く知っているキャラクター」を使ってごく自然に「棒グラフ」に移行するための学習が展開できていました。 グループ学習では、他のグループの発表を見て、自分たちのグループの考えをつけたすなど、学び合う様子もあり、教材アプリを使った調べ学習やアルファベット入力の練習など、子ども同士の刺激し合いでどんどん進化していく様子も見られました。1年生でも教材の選択や教員の指導により、ここまで可能性が広がるのだとうれしい驚きでした。
 この教材アプリから、ベン図や表の作成や、4年生の学習「資料の整理」につながる可能性を感じました。
 また、「ひみつのあんごう」も興味深い仕組みです。きれいな字を書くことができないと、自分の成果がゼロになってしまうので、真剣に必死に文字を書き写すという「必然性」が生まれ、「教えなくても・強制しなくてもできるようになる」という良い仕掛けになっていました。
 宜野湾市では電子黒板やプロジェクターを一斉提示で使用する教員が増えていますが、子どもの活用はまだまだこれから。授業構想を持ち、情報モラル やルール作りなどを含め、その場その場で必要な学びを創り上げていくことができれば、低学年でも有効な活用が可能であるということがわかりました。 「情報モラル教育をしていないから使えない」「ICT活用の知識がないと子どもに使わせることができない」というのではないことを今後、広く示していきたいと考えています。
 これを支える環境としては、無線LAN環境は必須。簡単で使いやすく効果のある整備を目標に、各教室でもタブレット端末を円滑に活用できるようにしていきたいですね。PC室に加え、第2PC室やタブレット端末の活用によって、ICTをいつでも使えるようなリプレイスも考えています。

1年生が情報を分類・比較

「ポケタッチ」の特徴の1つが、情報を分類・比較できるトレーニングだ。ポケモンの種類や属性の多様性を活かし、ベン図やマトリックス表などの思考ツールを使ってポケモンを分類していくので、思考ツールの活用をごく自然に身につけることができる。豊川教諭は「1年生でどれくらい分類できるのかと半信半疑でしたが、予想以上でした」と話す。
ポケモンには「みず」「でんき」などのタイプ属性があり、中には1つのタイプを持つポケモンもいる。
それを「ベン図」などで分類できるようになっていくのだ。そこから、この学びを算数の授業「かずしらべ」に活かすという冒頭の授業展開につなげた。

「ひみつのあんごう」に予想外の教育効果

「ポケタッチ」のログインは「ひみつのあんごう」で行う。児童は前回の終了時に表示された「ひみつのあんごう」を紙に記録。それを見てログインする。1人ひとりの進捗状況は「あんごう」として記録され、その「あんごう」が入力されると解析、そのときのデータ状態に戻り、続きができるという仕組みだ。
 1人ひとりの進捗状況の膨大なデータをサーバに蓄積する必要がなく、いつでも「ひみつのあんごう」さえあれば続きを行うことができる。
 「ひみつのあんごう」には、「ポケタッチ」開発者にとっては予想外の、低学年ならではの効果があった。1年生にとって、平仮名と数字を鉛筆で正しく記録するのは、それほど簡単なことではない。自分で書いた「ひみつのあんごう」が読み取れず、最初からやり直さなければならないという悔しい経験をする児童もいた。この経験から、「丁寧に文字を書く」ことに熱心に取り組むようになったという。

システムキーボードの大きさは低学年向き

 同校では、ICT支援員が授業づくりをサポートしている。ICT支援員の比嘉敏雅さんは、「1人1台のiPad活用を支援する際にまず心配したのが、その操作方法です」と語る。 「家庭でのPC活用率の低下に伴い、低学年になるほど、PC室のPCやキーボード、マウスは馴染みが薄いものになっており、電源をつけるだけで大騒ぎになる状態でした。また、どちらも低学年児童の手には大きすぎるようで、指導の際には大変な面がありました。これが画面上のシステムキーボード使用になるとどうなるのかと心配していました」。
 ところが実際にタブレット端末を使ってみると、大人にとっては小さく感じる画面上のキーボードは、1年生には手をそろえてキーボードの練習をするのにちょうど良い大きさのように見えたという。 しかも、マウス操作もダブルクリックも必要がない。 「システムキーボードは使いにくい、というのは、現状のキーボードに慣れてしまった大人の思い込みかもしれないと感じています」と話した。

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